第1章
僕が見た神さまの世界
気が付いたら神さまの世界にいたエンマくん。
エンマくんはそこで何を見て、何を感じたのでしょうか?
(声の出演 エンマくん:VOICEVOXずんだもん、神さま:VOCEPEAK)
音声はダウンロードもできますよ!
僕はまぶしさで目を覚ましました。
目を開けるとそこは光り輝く世界です。
僕は光に包まれていたのです。
無重力の宇宙に浮いている、そんな感じです。
上も下もありません。周りじゅう光だらけです。
これは一体どういうことだろう?
なぜ僕はここにいるんだろう?
さっぱりわかりません。
目覚める前に何をしていたのか? 僕は寝ていたの? 気を失っていた?
とにかく僕は光の中にいます。光以外、何も見えません。自分の体さえも見えないのです。
この光、今まで見たことのない美しい光です。シルバーでもないし、ゴールドでもないし、とにかく美しい色です。
それに不思議なのは、こんなに輝いているのに全くまぶしさを感じないってこと。
そして何も聞こえません。
何も見えなくて何も聞こえない。
それなのに、なぜでしょう? 一切、寂しさや怖さを感じないのです。
それどころか、とてつもない優しさに包まれている、そんな感覚があります。
そして僕の心自体が今まで体験したことがない、落ち着いた、ゆったりとした、どういったらいいのかわからないけど、「ありがたい」って気持ちになっています。
ここはどこだ?
僕はどうなったんだ?
どこに来たんだろう?
何も見えない周りを見渡しているとフッと思いついたことがありました。
もしかして・・・。
本当にそうならいいんだけど・・・・。
とその時、
「ようこそ!」
と、どこからともない声で僕は飛び上がりました。
えっ?! 僕は振り返りますが、誰もいません。
右を見て、左を見て、ぐるり一周見渡しましたが、やはり誰もいません。というか何も見えません。
気のせい?
そう思った瞬間
「ようこそ!」
体の中に染み入るような声が再び響きました。
気のせいじゃない!
包み込むようなとてつもなく大きな存在を感じさせる声。
そして優しさそのものの声です。
僕は声の主を確信しました。こんな声を出せる存在は一人しかいない。
僕は恐る恐る聞きました。
「あ、あなたは・・・、神さまですか?」
「そうよ、エンマくん。ようこそ光り輝く愛の世界へ!」
わあ! 僕は嬉しさで胸が張り裂けそうでした。
「じゃあ、やっぱりここは神さまの世界なんですね?」
「そうよ。エンマくん頑張ったものね」
「神さま、僕のことを知っているんですね?」
「もちろんよ。なんてったって私は神さまですからね」
僕は信じていました、神さまの世界の存在を。
光り輝く、愛そのものの世界。
あー、僕はこの世界に来ることができたんだ。
僕はきっと神さまの世界に行けると信じていました。
僕は弱虫で自分に自信がなく、すぐに凹んでいました。
でも、どこかで自分は特別だという思いもあって、愛を大事にすれば、きっと神さまの世界に行けると思っていたのです。
僕は神さまの世界に来ることができた。
僕は選ばれたってことなんだろうな。
うれしくって、神さまに言いました。
「僕は神さまの世界に来ることができたんですね?」
「そうよ、エンマくん」
神さまは優しく微笑みながら言います。
「それで、どう? この世界の印象は?」
ちなみに実際に微笑んでいるかどうか目でみてわかるわけじゃないです。
目では見えないけどなぜかわかるんです。どう説明したらいいかわからないけどわかるんです。
僕はさっき感じたことを話しました。
「すごいです! きれいな光で満ち満ちています」
「でしょ!」
「それなのに全くまぶしくないですね。不思議です」
「そうでしょ!」
「それに優しさ、というかこれは愛なんですかね。優しいあたたかさに包まれているって感じです。とても心地いいです」
僕は今も自分を包んでいる優しさを感じながら言いました。
「そうでしょ、そうでしょ! さすがエンマくん!」
神さまは拍手しながら嬉しそうにそう言うと
「それからそれから?」 と催促しました。
「え~と・・・」 僕は思い出そうとすると、
「そうだエンマくん、目を閉じてみて。私の存在は気にしなくていいから、目を閉じてゆっくりこの世界を感じてみて」
「わかりました」
僕は神さまに言われた通り、この世界を感じるために、ゆっくり目を閉じました。
すると突然・・・・、
魂が宇宙全体に広がったような感覚になりました。
目をつむっても周りが光り輝いていることには変わりがありません。
というより、もっと輝いているようにも感じます。
「なんて優しい光なんだろう」
そして、なんと心地いい暖かさ。
僕は体中の力が完全に抜けているのに気が付きました。この空間に溶けてしまいそうです。
この光が僕を優しくマッサージしてくれています。なんと心地の良いマッサージでしょう。
アッ、この光!
僕は気が付きました。
この光は、なんとすべて生きているではありませんか!
その存在する無数の光が僕に心地よく当たってきて、それがなんとも心地よいマッサージになっているのです。
もう、びっくりです。
光だと思っていたものは存在でした。すべて、愛を持った存在です。
さっき、愛に包まれた感覚だったのは当たり前です。本当に愛の存在が僕の周り中に溢れているのですから。
圧巻でした!
この光の中で、僕も一体となり彼らと何かのコミュニケーションをとっている、そう感じたのです。
なんて心地いいところだ!
僕はすっかりこの世界に魅了されました。
この世界に来ることができて、本当に良かった。
僕はあの世で神さまの世界にあこがれながら、悩んでいました。
僕はあの世、つまり人間世界での出来事を思い出そうとしました。
するとその瞬間、目の前に過去の出来事が映像としてありありと現れたのです。
保育園の時、体の大きな子に馬乗りにされて情けなかった。
初めて食べたタコ焼きがおいしすぎて幸せだった。
おゆうぎの時間にかわいい子と手をつないでときめいた。
親にばれないようにプリンを食べてドキドキした。
体がだるいとウソをついて学校を休んで罪悪感を感じた。
勇気をだして好きな女の子に手紙を書いた。
とにかくいろいろな様子が現れました。
そしてその時の感情をありありと感じたのです。
僕は小学校の時、運動が得意で、いつも一番か二番。大会の代表にはいつも選ばれていました。
明るくて、面白くて、クラスの人気者でいつも友達の輪の中心にいました。
と、これは小学生の栄光時代の話。
ところが中学の時、親の転勤で都会の学校に転校になってから、僕の暗黒時代が始まります。
ずっと田舎暮らしだった僕は、普通にしゃべっても方言が面白いらしく、笑われてしまいます。
何かを伝えようとしても、方言を笑われてしまい、話すことが怖くなりました。
そこに現れたのが矢沢君という、とてもイヤな奴です。
彼はみんなの前ではさわやかでちょっとカッコよくて女の子に人気です。先生にもよく褒められていました。
そんな彼は、僕が一人になっている時を狙っては、意地悪をしてきたのです。
でもどんなに意地悪されても、僕は何も言えなくて、そんな勇気のない自分が情けなくて情けなくて。
そして、僕はどんどん消極的になり、自分のことが信頼できなくなっていきました。
小学校の時はいつも友達の輪の中心にいた僕は、いつか端っこにいるようになったのです。
でも人に嫌われるのが怖くて、無理に何でもないように振る舞っていました。
自信のない僕は、ちょっとしたことで人にどう思われたかが、気になって気になって仕方がありませんでした。
常に人の目を気にする僕は不自由極まりありません。
こうなったのは矢沢君のせいです。
矢沢君さえいなければ、矢沢君さえいなければ・・・・、
「僕は自分を好きでいられたのに・・・」
「僕は僕らしく生きられたのに・・・」
「もっと自由にのびのび生きられたのに・・・」
一年に四百回くらいはそんな思いを繰り返していたのです。
自分が嫌いってとてもイヤな感情です。
最近はそのイヤな感情が出てきそうになると、とっさにその感情にフタをする、そんな高度なテクニックを取得しつつあったのです。
だから・・・、
その暗黒の時代が目の前に映し出され始めた時、僕はヤバいと思いました。
また、自分を嫌いなイヤーな感情に押しつぶされそうになる。
ところがところが今回、その時の映像がありありと現れたのに・・・・、不思議なことにイヤな感じにはなりませんでした。
自分が嫌いって感情は湧いたのに、イヤーな感情が出てこないのです。
それどころか、自分のことを嫌いと思っている自分のことを愛おしいと感じたのです。
愛おしくて、ぎゅっと抱きしめたい! そんな衝動が湧きました。
えっ!? 自分が愛おしい?・・・・・・・ま、まさか!
自分のことを愛おしく感じる、そんなこと今まで一度もなかったので、びっくりです。
自分が愛おしい、それは、とてもとても素敵な感覚です。
すると、なんとあんなに恨んだ矢沢君のことも愛おしいと感じたのです。
「えっ? 矢沢君が愛おしいって? そんなのイヤだよ!」 そう思いましたが、どうしようもなく感じてしまうのです。
そして、矢沢君だけではなく、すべてのことが愛おしいと感じました。
そして、大きな大きな「ありがたい」 という感覚に包まれたのです。
やがて映像は消え、再び光だらけになりました。
僕は“愛おしさ”と“ありがたさ”に完全に包まれています。
それはまるで、僕自身が愛そのものになった、そんな感覚です。
「僕は愛そのものだったんだ」 そう感じました。
自然と涙が、頬を伝っていました。
僕は光り輝く愛に包まれながら、ずーっとずーっと、こうしていたい、と思いました。
その時です。
「エンマく~ん」 どこからともなく僕を呼ぶ声が・・・・。
「エンマく~ん」
誰だ? 僕のこの幸せ一杯を邪魔するのは?
ん? じゃないじゃない、これは神さまだ。
僕はすっかり神さまのことを忘れていました。
我に返って僕は言いました。
「アッ、神さま、すみません。あまりにも気持ちよくて」
「いいのいいの。とても気持ちよさそうだったわ」
「そりゃあもう、本当の幸せを感じていました」
「どんな感じだった? 教えて!」
「はい」
僕は感じたことを興奮気味に話しました。
目を閉じた途端、魂が宇宙全体に広がったように感じたこと。
輝く光はすべて生きた存在だとわかったこと。
それらと僕は一体であると感じたこと。
人間の世界のことを思い出そうとすると、過去の出来事が映像としてありありと現れたこと。
その映像はすべて感情とともに現れたこと。
そして、自分のことを嫌いだって思っている自分を愛おしいと感じたこと。
すると、あんなに恨んだ矢沢君のことも愛おしいと感じたこと。
矢沢君だけじゃなく、何もかもが愛おしくて仕方がなくなったこと。
そして、「ありがたい」という気持ちでいっぱいになったこと。
まるで、僕自身が愛そのものになった、そう感じたこと。
僕はフッと気がついて神さまに聞きました。
「神さま、これって神さまの世界から見ると、人間世界のすべてが愛おしくなるっていうことですか?」
「そういうことよ」
「すべてが愛おしいって、こんなに幸せなんですね!」
「でしょう!」
僕はまた幸せ一杯に包まれ、体が溶けそうになりました。
「ハハ、エンマくん、よだれよだれ」
いけない、いけない。僕は慌ててよだれを拭いて
「そして神さま、僕たちは一体だって感じたんですけど、そうなんですか?」
「そうよ。もちろん私ともね」
「えっ? 僕が神さまと一体? いくら何でもそれはないでしょう?」
「だってそうなのよ。だからエンマくん自身が神さまでもあるわけよ」
「いえいえ、僕は神さまじゃないですよお」
いくら何でもそれは言い過ぎ、と僕は思いました。
「エンマくんだけじゃないわ。すべてが神さまって言っていいの。だから、無駄なものは何もないわ。ぜ~んぶ意味があって存在するのよ」
「えっ、全部って?」
「もう全部よ。目に見えるもの、感じるもの、ぜ~んぶよ」
全部・・・、僕はぐるりと周りを見渡し、神さまを見ました。
神さまは「すごいでしょ!」という表情でニコニコしています。
それにしても神さまの世界は本当にすごい!
すごい体験をさせてもらって、なんて僕は幸せなんでしょう。
自分のことを愛おしいと思える体験。そうしたら、すべてが愛おしくなるという体験。
この体験をした僕はもう昨日までの僕ではない、自信をもってそう言えます。
「神さま、僕をここに連れてきてくれてありがとうございます!」
「いえいえ、それほどでも」
と神さま、なぜか僕から目をちょっとそらせたような。
「それにしても、神さまは、なぜ僕をここに連れてきてくれたんですか?」
「なぜなんでしょう?」
「ここにはいつまで居ていいんですか?」
「いつまでかしら?」
「ずっとここに居たいというのが本音なんですけど」
神さまはただニコニコしています。そして、
「エンマくんって面白いね」
と、いたずら好きな女の子のような微笑みを浮かべて言いました。
「何ですか急に。僕は全然面白くないですよ」
「エンマくん、人間世界でも面白かったもんね」
「だから、全然面白くないですって」
神さまは一体何が言いたいのだろう?
「エンマくんは、なぜここに来たと思うの?」
「わからないんですけど・・・」
「けど?」
「神さまの世界は愛の世界ですよね」
「そうよ、見ての通り。愛だらけ」
「僕は絶対そうだと思ったので、とにかく愛を大事にしてきました。だからかなあ、と思うんですが」
「うーん、残念! 愛を大事にしてくれたのはありがたいんだけど、だから来ることができたというわけではないのよねえ」
えっ? 違うんだ。絶対にそうだと思っていたのに。
じゃあ何だろう?
もしかして
「神棚に毎日手を合わせていたからですか?」
「ありがたいわ、でも違うのよねえ」
「神さまの世界を信じていたからですか?」
「ざんねーん!」
「真実が知りたいと思って勉強していたから?」
「ブッブー!」
神さまは顔を横に振ります。
完全に楽しんでいる様子です。
「神さま、完全に楽しんでいますよね。降参です。教えてください」
「フフ、いいわ」
僕は選ばれてこの世界に来させてもらった。きっと自分でも気づかない徳を積んだのだろう。
小さな虫の命もできるだけ大切にしたことも思い出しました。
もしかしたら、そんなことかもしれない。
一体なぜ僕はこの世界に来ることができたのか?
神さまはゆっくり話し始めました。
「この世界にはね」
「ハイ」
僕は答えを聞くのが楽しみのような、ちょっと怖いような・・・。
「この世界にはね」
ちょっともったいぶった神さまはあっけらかんとした調子で
「み〜んな来るの!」と言いました。
ん? みんなって? 僕には何のことやらさっぱりです。
「みんなって、どういうことですか?」
「誰もかれも、み~んなよ!」
「ちょっと待ってください!」
僕は慌てました。
「僕は神さまに選ばれてここに来たんですよね?」
「エンマくんがそう思っていることはわかっていたけど、そうじゃないのよね。みんななのよねえ」
エーッ!!!!
いけない、いけない! せっかく僕は自分が愛おしいと思ったのに、また凹みそうです。
とにかく僕はすぐに凹んじゃうので。
僕は食い下がりました。
「み~んなってことはないですよね。だって、神さまの世界は愛の世界ですから、愛のない人は来ることはできないでしょ?」
「それがそれが、みんななのよ」
「矢沢君なんて愛のかけらもない奴ですよ。絶対に来ることはできないですよね?」
「矢沢君だって、いずれ戻って来るわよ」
やだやだ、それはイヤだ! 僕は大きく首を横に振りました。
だって、今まで彼のことを思い出して腹立たしい気持ちになった時は、
「結局あいつは地獄かなんかに行くことになる。僕は神さまの世界に行くんだ」と思って、自分を慰めてきたんだもん。
だから矢沢君は神さまの世界に来てはいけないんです。
神さまに嫌われなくちゃいけないんです。
それなのに・・・・、
僕はわずかな期待を持って聞きました。
「まさか神さまは、矢沢君のことを愛おしいなんて思っていないですよね?」
「フフッ、矢沢君のことも愛おしいわよ」
「ええ、そんなあ・・・矢沢君って、とんでもなく性格悪いんですよ」
「そうよね。それでも愛おしいの」
えー!
落胆する僕に神さまは
「もちろん、エンマくんのことも愛おしくてたまらなかったわよ」
愛おしくて・・・たまらなかった・・・。
「エンマくん、よく自信をなくして落ち込んでいたわよね」
「はい。もう、しょっちゅう」
「そんなエンマくんが、私、愛おしくてたまらなかったの。すぐ隣で『大丈夫、大丈夫よ。私は応援しているから』 って言ったこともあるのよ」
えっ、すぐ隣で?
思わず見上げた僕に、神さまは優しく優しくうなずきました。
そして言いました。
「エンマくんもさっき、そんな自分のことを愛おしいって感じたもんね!」
「ハイ、感じました」
「そして、矢沢君のことも愛おしいって感じたのよね?」
アッ、そうだった。感じてしまったんだった。あんなに嫌なやつなのに・・・。
フーッ、僕はため息をつきました。
そして神さまに聞きました。
「来たとしても会うことはないですよね」
「さあ、それはどうかしら」
神さまは首をかしげながら、ちょっと楽しそうにしています。
嫌だよお、絶対に会いたくないよお。
でも、万が一会ってしまったとしても、今の僕だったら・・・、そう今の僕だたら、ガツンと言えそうな気がする。
そう言えば、
「さっき神さまは、矢沢君も戻るって言いましたよね」
「そう、戻るの」
「来るんじゃなくて戻るんですか?」
「そうよ。ここがみんなの故郷だからね。ここからあの世に行って、あの世での体験が終わったらまた戻ってくるの」
ここが故郷?
「でも、僕がここに来た時、神さまは『ようこそ』って言いましたよ」
「えっ、そんなこと言ったっけ?」
「言いましたよ。戻ってきた人に『ようこそ』はないですよね。ふつう『おかえりなさい』とかそんな感じですよね」
「そうね、いつもはね」
「いつもはねって?」
「だって・・・、エンマくんを見ていたら、完全に勘違いしているのがわかったから・・・・」
「わかったから?」
「ついつい言ってしまったのよね。『ようこそ』って」
「そりゃないですよ。しかもただの『ようこそ』じゃないですよ。『ようこそ、光り輝く愛の世界へ』なんて言いましたよ」
「あら、そんなこと言ったかしら? あー、面白かった!」
「結局楽しんでいたんじゃないですか」
神さまもひどいよね。確かに僕が勝手に早とちりしちゃったんだけど。
でも正直、僕はびっくりしているんです。
今までの僕だったら、もう凹みまくりだったと思うけど、不思議にそうでもなかったから。
これは神さまの世界の効果なのかな。
それにしても、僕の勘違いもひどいよね。
考えてみたら僕は腹を立てたり、イライラしたり、人の失敗を望んだり、愛がないなって思う人をバカにしたり、正直言ってそんなに愛の深い人間じゃなかったよね。
だから、もし愛の深い人間だけが来ることができるのだったら、僕は無理だったかもしれません。
ああ、正直にそう思える僕って愛おしいなあ、・・・・なんてね。
これが、僕が神さまの世界に来た時の話です。
神さまの世界は光り輝く世界でした。
光り輝く愛の存在で一杯でした。
そしてそこは、僕たちの故郷で、人間としての体験が終ったら戻って来るところでした。
この世界で愛に包まれた僕は、自分のことが愛おしいって思えました。
初めての体験でビックリです。
自分のことが愛おしいって、最高に幸せです。
すると、自分だけでなく、すべての存在が愛おしく感じられました。
なんと大嫌いだった矢沢君のことも。
そして、“ありがたい”という気持ちでいっぱいになったのです。
僕は愛そのものになった、そう感じました。
ここは僕たちの故郷ですから、みんな元々愛そのものの存在だっていうことのようです。
神さまはこの世界から人間世界を見守っているので、みんなのことが愛おしいのですね。
どんなに僕が自分のことを嫌いと思っても、神さまは愛おしく見守ってくださっていたのです。
正直言って、矢沢君のことは嫌いでいてほしかったんだけどなあ。
第1章の世界観と眺めるヒント
第1章の世界観はこんな感じでした
■ 私たちの故郷は、神さまの世界である
■ 私たちは元々、愛そのものの存在である
■ この世界に戻ると、自分が愛おしい
■ 自分が愛おしいと、すべてが愛おしい
■ そして、感謝の気持ちでいっぱいになる
■ 神さまはいつも私たちを愛おしく見守ってくださっている
■ 神さまと私たちは一体
■ すべてが神さまと言っていい
■ すべての存在に、ちゃんと存在する意味がある
さあ、この世界観を元に眺める、というのがどういうことかというと・・・、
例えば、
★「私ってダメね」と思ったとき
「私がいくら自分はダメだって思っても、神さまは私のことを愛おしいって思っているんだって。エンマ様的に言うとね」
「私もあの世に戻ったら、こんな風に悩んでいる自分が愛おしく感じるんだって、エンマ様的に言うと。想像できないけど」
★誰かにとっても腹が立ったとき
「あいつ、本当に嫌なやつ! でも神さまはあんな奴も愛おしいんだって。エンマ様的に言うとね。私は絶対にイヤよ」
「エンマ様的に言うと、私もあの世に戻ったら、あいつのことを愛おしく? いやいやそれはないよ!」
★周りを見て
「エンマ様的に言うと、すべてが神さまかあ。私もあの花も。引き出しの奥に入ったままの鉛筆も?」
「すべてに意味があるんだって。どんな意味かは分からないけどね」
とこんな感じです。
「エンマ様的に言うと」とか「・・・だって」というのを入れているでしょ。
というのも、あなたはこの世界観を信じる必要はないんです。
というか、信じないほうがいいんです。
信じようとすると、自分の感情をごまかすこともでてくるかもしれないからなんです。
ですから「エンマ様的に言うと・・・だって」くらいがちょうどいい。
なんだったら「・・・だって、エンマくん的にはね。私はそう思わないけど」
それでもいいんです。
「私はそうは思わないけど、エンマくんの世界観ではそういうことなんだから仕方がないわね」
こんな感じでいいんです。
どんな言葉でもいいんです。
大事なのは、あなた自身がしっくりいく言葉にすることです。
できたら明るくポップにしたほうがいいですね。
そのほうが客観的でいられますからね。
ネガティブ感情にネガティブ感情を重ねないための工夫です。
一日一個に絞って眺めてみるもの、とてもとてもいいと思います。
「今日一日、神さまはどんな時も、私を愛おしいと思ってくださっている、と思ってみよう」
「今日一日、見るものすべて、神さまだと思ってみよう!」
とかね。
とにかく眺め方は自由です。「これで合っているかなあ」なんて心配することは全くありません。
ここで紹介した世界観や眺め方は、ただ参考にしてもらえればいいだけです。
あなたがしっくりいくものを見つけ出すような気持ちで、楽しみながら、ゆる~い感じで眺めてみてください。